わたしたちが正面から向き合う、妥協のない酒づくり。

東日本酒造協業組合の酒造り

越後杜氏の伝統と技と心を受け継ぎ、地元の蔵人が越後流の酒づくりによる二本松の酒を醸す。三百年という長い歴史の中で培われた揺るぎない自信と、つねに進化を指向する柔軟な姿勢。奥の松の酒蔵は、厳しさと愛情に満ちた名酒のふるさとです。

精米・洗米

米を酒の命として、やさしく丁寧に接します。

東日本酒造協業組合では、酒の命である米を100%自社で責任を持って精米しています。玄米から白米までの全行程を管理できるように設備を充実させ、精米技術を駆使して原形精米による高精白米を実現しました。60%精米で二昼夜、磨きに磨く大吟醸酒用の40%精米では三昼夜にわたって精米機を稼働させます。毎年、米のでき具合は水分や硬さなどに微妙な違いが出てくるものです。機械任せではなく、熟練者によるきめ細やかな管理や判断が欠かせません。精米を終えた米は、色彩選別後砕米を除き精米時に生じた温度を徐々に下げ、室温と湿度になじませるために「枯らし」という寝かせの工程へ。

次に計量された米は、ジェットの混気水流によって洗米され、最新式のサナ板式浸漬タンクで米の品種、精米歩合によって蒸し上がりの状態を想定し米が余分な水分を吸わないように浸漬時間を決定します。

蒸米

最新設備と蔵人が作り出す最上級の蒸米。

東日本酒造協業組合では、蒸米放冷機と森の新鮮な空気を駆使し、蒸しの最終工程で乾燥蒸気をあて、表面を硬く仕上げ「外硬内軟」な酒づくりに最適な蒸米に仕上げています。「外硬内軟」の蒸米は、麹によってゆっくり溶かされるので、バランスのよい並行復発酵の長期低温発酵を可能にするのです。出来上がった良質な蒸米は、やがてインパクトのある柔らかな味わいの穏やかな酒を醸し出してくれます。

最新設備と蔵人の思い、こうして一手間一手間重ねて作り上げていくからこそ、自信を誇りをもって「奥の松」の名酒として世に送りだせるのです。

洗米・浸漬という工程によって、米に適度な水分を含ませた浸漬米をやさしくていねいに、連続蒸米機へ均等に熟練者の技で供給し、蒸し上げます。

酒質を大きく左右する麹づくりへのこだわり。

東日本酒造協業組合では、つくる酒の種類や量。作業などに合わせて最良の製法で麹づくりを行っています。昔ながらの蓋麹法か箱麹法、あるいは最新の製麹機による製法かを使い分けているのです。製麹機による製法といっても機械任せということではありません。蓋麹法の思想を反映させた最新の設備を導入しながらも手づくりの製法と併用しています。蓋麹法を熟知した蔵人が知識と経験を生かして手動優先で製麹機を操作するのです。

麹菌はカビの一種で、米のでんぷんを糖化させる酵素を出させるために黄麹菌を繁殖させます。そのため、冬の酒蔵も麹室だけは30℃と常夏のような温かさ。しっかりと温度湿度管理された麹室では、経験豊富な蔵人たちが目的の酒質に最適な麹をつくるために繊細な手作業を繰り広げます。

「はじめに麹ありき」と言われるほど、酒づくりにおいて重要な鍵となる麹づくり。その麹にも酛(もと)をつくる時に使用する「酛麹」と醪を仕込む工程で使用する「掛麹」があり、それぞれの目的にあった麹づくりが要求されます。麹づくりにこだわる東日本酒造協業組合では、さまざまな酒質、用途に合わせた麹を安定品質で安定供給できるようにシステムを整え、蔵人においても温度・湿度・衛生管理ができるような特別な麹室の環境整備を設けています。最新の設備と、熟練した蔵人の細やかな手仕事。東日本酒造協業組合には、酒づくりに必要な要素が十分に備わっているのです。

酛(もと)

丹精込めた酛麹と清冽な仕込み水との出合い。

酛(もと)をつくるためのタンクに麹室で育てられた「酛麹」と仕込み水が入れられます。樹脂製の櫂で攪拌(かくはん)し、そのタンクの中に乳酸と酵母を仕込みます。これらの酵母は、奥の松に古くから住みついている家付き酵母を長年かけて純粋培養したもので、「櫂入れ」と呼ばれる力仕事のはじまりです。蔵人は酛の状態に合わせて力を加減しながら、巧に櫂を繰り攪拌し続けます。奥の松では、速醸酛を主とした育成酛を採用しているため、発酵する力も強く、調和のとれた香り高い華やかな酒に仕上がります。それらは鑑評会でも高く評価されており、そうした実績を次なる酒づくりに反映させ、その時代その時代で最も優れた技術を取り入れています。

奥の松の仕込み水は、安達太良山の清冽な伏流水。冬に降り積もった雪が、春の雪解け水となって地層深く染み込み、四十年の歳月を経て厚い花崗岩の岩盤から清冽な水脈となって湧き出てくるのです。ミネラル分をバランス良く含んだ酒づくりに理想的な仕込み水。地下100メートルにもおよぶ掘り抜き井戸により、50㎡/hの豊富な水量を確保し、貴重な天然の恵みとして有り難く利用させてもらっているのです。

醪(はっこう)

人、設備、道具、三位一体で伝統の三段仕込み。

酵母が十分に培養された酛は、仕込みタンクに移されます。蒸米と水が加えられて醪づくりの工程の始まりです。この仕込み法は、昔ながらの三段仕込みで、「初添え」・「仲添え」・「留添え」と日を追って3回に仕込むため、少しずつ増量していくので酵母を守る乳酸菌が薄まることのない優れた手法です。さらに、雑菌の繁殖を抑え、発酵をスムーズに行わせる日本酒独特の技法。高品質な酒を生み出すために先人の知恵が生み出した方法で、高度な技術が求められます。この間の醪の温度管理や状態に合わせた櫂入れが非常に重要だからです。醪の状態は日々に変化し、泡の状態も「筋泡」「水泡」「岩泡」「高泡」「落泡」「玉泡」「地」などと呼ばれ、さまざまな状態に姿を変えていきます。

奥の松にはさまざまな仕込み法を習得した熟練の蔵人がいます。最新の設備をそんな熟練者が緻蜜に操作することによって技能は倍増。より高品質な酒づくりを可能にしました。新型の発酵タンクは丸底型。仕込み温度を自由にコントロールできるとともに、タンク内全体に自然に対流を促し、理想的な発酵を実現しています。人の技術と設備・道具を両輪となってはじめて、奥の松が理想とする酒質を造り上げることができるのです。

搾り

緻密なデータを杜氏の勘がはじき出す絶妙な搾り時。

酒づくりはいよいよ大詰め、醪を搾り、酒と酒粕にわける「上槽」という工程に入ります。その搾りのタイミングが重要です。あらゆるデータの分析と経験豊富な杜氏の勘が物を言います。もっとも代表的な搾りの手法は、酒袋を使った昔ながらの袋吊り。これは、醪を酒袋に入れて袋ごと吊し、自然に滴り落ちる雫を集める手法です。とても繊細で手間暇のかかる贅沢な方法だけに、その雫だけで作られる酒は「雫酒」と呼ばれ、日本酒の最高峰と言われています。上槽を終えてか槽から出てくるのは、まさにそれは誕生したばかりの新酒。荒削りで若々しい新鮮な香りが漂う搾りたての新酒。杜氏を中心とする蔵人たちの知識と経験と技、そして熱い思いがギュッと凝縮された渾身の雫です。

貯蔵

最良の時に、最良の清酒として酒蔵を出発するために。

まだ粗削りで若々しい澱引き、火入れと言われる加熱殺菌などの工程を経て清酒となって貯蔵タンクへ。貯蔵中にも清酒はゆっくりと熟成を続けます。そのためタンク内の湿度管理には細心の注意が必要です。東日本酒造協業組合の貯蔵タンクは、蔵内と屋外の両方にあり、種類も豊富。さらに、吟醸酒のような高品質でデリケートな酒をバランスよく熟成させるためには低温で貯蔵しなければなりませんから、氷温、冷蔵庫に貯蔵するケースもあります。常温からマイナス7℃まで、貯蔵温度については酒のタイプ別に幅広く対応、さまざまな酒の種類や酒質に合わせて貯蔵の温度コントロールは完璧です。

また、大切な熟成の時間も酒の種類によって異なりますから、東日本酒造協業組合では、それぞれの酒が最良の状態になったときに商品として出荷されるように、タイミングよく最後の成分検査や官能検査を行っています。